目的
ピリプロキシフェンなどの幼若ホルモンを曝露させることによりオス仔虫の比率増加が確認されている。そこでピリプロキシフェン濃度を段階的に希釈することにより、再現性を確かめることを本実験の目的とした。オスの増加を測定する方法として、成体を数えるのは困難なため通常の単為生殖では生まれない耐久卵を測定することでオスの比率増加の指標とした。
方法
不快害虫用スミラブ発泡剤SES(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社)を2 gとり2Lのペットボトルに入れ段階的に希釈していき、101 ng/L、102ng/L、103 ng/L、の3つの濃度を用意しそれぞれ20匹の成体を投入した後10日間個体数と耐久卵数の推移を観察した。個体数と耐久卵数はカウンターを使用し目視で計測した。
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結果
図11-1にピリプロキシフェン濃度とタマミジンコの繁殖の関係を示した。101ng/L、102ng/L、はともに成体と耐久卵の数を伸ばしたのに対し103ng/Lでは成体も耐久卵もともに数が伸びなかった。
考察
ピリプロキシフェン濃度が上がるほど成体と耐久卵数が減ったことからピリプロキシフェンに対するタマミジンコの生殖限界は103 ng/L前後であると考えられるが、10ng/Lでは成長は遅いものの、繁殖していたことからピリプロキシフェン自体が有毒ではなく雌雄をコントロールできる適正値があると推測された。鑪迫らの報告の再現性を個体数と耐久卵数の増加から確認することができたが、今後の目標としてより細かい濃度設定でオスが発生する濃度を検討する必要性がある。